シブーストを夏向けに考案した、バナナとのペアリングで提供します。

シブーストクリームは、200年も前に考案された、古典菓子の代表のひとつとしても有名です。
修行時代学んだシブーストは、空焼きしたフィユタージュにクエッチェ、アプリコットなどのフルーツを敷き詰めて、レモンの皮と果汁で風味を整えたシブーストシトロンをたっぷり詰めて整形して、キャラメリーゼして仕上げたものでした。

炊き上げたカスタードクリームにゼラチンとレモンジュースを加えて混ぜ合わせて、ミキサーで泡立てたイタリアンメレンゲを合わせる。
生クリームを加えずに仕上げていくので、糖分は多めながらもさっぱりとした印象の口あたりになるので、現代の健康志向に重きを置いた考え方にもフィットしているようにも感じます。

梅雨入りの季節を迎え、いろんなお菓子がさらされるのが湿度の問題。
吸湿しやすいココアパウダーやキャラメル、クッキー類などは顕著にその影響を受けやすいです。もちろん、シブーストを語る上で重要となる、表面のキャラメリーゼも然り。今まで湿度による損傷を理由に展開を見合わせていたのですが、夏向けの軽い味わいを利点に活かした新作を考案しました。バナナという夏向け食材を用いたのも季節感を意識してのことです。

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シブーストの製法

バナナシブーストの仕込み

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カスタードクリームの製法にならい、卵黄とグラニュー糖を擦り合わせたら、プードルフランを加えて混ぜ合わせます。

プードルフランについては、シブーストショコラの記事でも解説しています。こちらから

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牛乳とバナナのピューレを一緒に温め、卵黄に注ぎ入れてカスタードクリームのように炊き上げます。

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ホイッパーを用いて、強火で熱して一気に炊き上げるのがコツ。加熱により、卵黄と粉に火が通る時に液体から固形分へと物性変化を起こします。この時が焦げ付きやすく、また手早く火入れしないとダマになってしまったりするので注意が必要です。

炊き上がったカスタードクリームにはゼラチンを加えて溶かし、裏ごします。

イタリアンメレンゲ

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熱したシロップを、卵白に注ぎ入れながら泡立てていき、しっかりとした気泡のメレンゲを作ります。
卵白を温めながら泡立てることで糖度がありつつもふんわりとボリュームのあるメレンゲができるのはこの製法の最大の利点。卵白をどの程度泡立てておいてからシロップをどういうスピードで注ぎ入れるかについては、個々のパティスリーでもそれぞれ見解が違うようです。

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シブーストで使うメレンゲは、できるだけ手早く泡立ちのピークに持っていき、温度が暖かい状態で使用することです。

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バナナのクレームパティシエールの全量を一気にメレンゲに加えて、手早くゴムヘラを用いて大胆に合わせていきます。
シブーストクリームのレシピの特徴は、カスタードクリームの中に多量のゼラチンが含まれていること。メレンゲの分もホールドさせる必要があるゼラチンは、当然冷えてきた状態ではぎゅっと固まってしまいます。カスタードクリームと合わせてからも40度程度、メレンゲの出来上がりも温かい状態の40度程度で合わせていくのが望ましいです。
混ぜ合わせた時にカスタードクリームの一部がダマになってしまったり、ふんわりとしたメレンゲの質感が潰れてしまったり。

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出来上がったシブーストクリームを型に絞り出して冷凍します。

バナナとのペアリング

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夏に向かってシブーストを提供するということで通常とは違った感覚に捉えられがちですが、きちんとした満足度のある味わいに仕上げていきつつも、夏場の気温の高さや体温の高さ、口どけや味わいのボリューム感にはきちんとしたさじ加減が不可欠。

72%のハイカカオでありながらも、甘みの広がりを感じ取れるブラックチョコレート、ノワールエクアドル。オレンジやアプリコットの黄色いフルーツのニュアンスを色濃く纏ったフレーバーを引き立たせるガナッシュナチュールを合わせます。
低脂肪フレッシュクリームを多めに配合し、柔らかなテクスチャーのガナッシュを仕込みます。

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仕上がりはとろりとしたなめらかな食感に。冷え固まってしまうバターは加えず、チョコレートのカカオ分を利用してセット力のあるガナッシュに仕上げます。

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バナナはキャラメルソテーして、オレンジジュースで仕上げ、風味を整えます。エクアドルカカオとのペアリングを睨んでの構成です。

フードペアリングとは?について、コラム記事(外部リンクより)を参照ください

クルミのペースト

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クルミはナッツの中でも特に酸化が早く、扱いにくい食材です。
ペルシュでは自家製でローストしたクルミをフードプロセッサーでペースト状に加工して使用します。

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クルミのリキュール、ノチェロを加えて風味を強化して仕上げます。

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クルミのクルスタリゼは、煮詰めたシロップにあらかじめローストしておいたクルミを加えて手早くかき混ぜていきます。

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意図的に手早く撹拌して、シロップをシャらせる(糖衣した砂糖を結晶化させる)ことで、カリカリとした食感に仕上がります。

組み立て

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空焼きしたタルトに、テンパリングしたチョコレートを塗り広げておきます。これによってタルトの湿気り止め、風味の強化を図ります。
ガナッシュを分割したら、バナナ、ムスリンノワの順に並べて、冷やし固めておいたシブーストクリームをセットします。

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シブーストの表面にグラニュー糖を均等に均して、熱した焼きコテでキャラメリゼします。3回繰り返して、分厚いキャラメルの層に仕上げ、キャラメリゼしたバナナとクルミのクリスタリゼで仕上げます。

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チョコバナナとキャラメル。そんなファーストタッチです。
ただし、シブーストクリームの妙とも言える、軽い口あたりはホイップクリーム不使用で見た目よりも食べることに対してのボリューム感は軽めに。それは今の季節のゼリーという水分によるボリュームが構成されていないというところにも着目してください。
クルミの味わいの余韻は、後半その他の食材の後から追いかけてくる。食感や風味、口どけ全てのバランスは季節ごとに変わります。満足度に対しての訴求にも妥協なく構成しました。

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