ヨーロッパ伝統菓子のティラミスとオペラをコーヒーで繋ぎアレンジする

伝統的(クラシック)なお菓子をベースに。というのが今年、2019年の新作に対するテーマ。
フュージョンティラミスオペラ、というお菓子はペルシュの過去作としては梅雨時期の間までは定番のアイテムとして数年に渡り提供を続けてきました。
今回は、フュージョン(融合)ということも併せて見直しながら、より美味しくする為にどうすべきか?に向き合った新しいティラミス&オペラの融合に触れていきます。

コーヒーとチョコレートの組み合わせについて考える

コーヒー豆もカカオ豆も、赤道直下の環境下で生育する素材。様々な共通因子が含まれるのは想像に容易ですが、今回はフランスの代表的な古典菓子、コーヒーとチョコレートを層に組み上げて仕上げたオペラと、説明不要のイタリアンドルチェの代表、ティラミスの共通因子が何なのか?といったところから考えるのが始まりでした。

単直な答えは、コーヒー
ティラミスであれば、マスカルポーネにエスプレッソ。
オペラではコーヒーのアンビバージュにラムやブランデー。はたまたクレームオゥブールキャフェ(コーヒー風味のバタークリーム)をサンドして仕上げて行きますよね。
もちろん、イタリアとフランスではコーヒーに対する思い入れは全く違うとおもいます。ここでは割愛しますね。

コーヒーの使い方で両者に共通したのが「みずみずしさ」つまりアンビバージュのシロップにコーヒー。というのが鍵ではないだろうか?そういった推測を立てたのはいいのですが、この季節、必ずコーヒーゼリーがその玉座に就いているのです。

ペルシュのコーヒーゼリーはクレームブリュレを組み合わせたスタイルです。こちらからご覧ください(過去作なので画像は異なります)

コーヒーゼリーとは違った、喉の通りの良い、ジュレでは表現できないお菓子を作る。というのがメインテーマとして落ち着きました。
そこで出来上がったのがチョコレートをリキッド状に、甘さと苦味、酸味のバランスを全体に配置してコーヒーとチョコレートに多彩な味わいをもたせました。オペラの濃厚さをギリギリ抑えた満足感に加えて、マスカルポーネチーズで仕込んだ「ティラミス」も味わえます。

ティラミスカフェショコラ。それでは新しく生まれ変わったふたつのトラディッショナルの融合、その製法をみていきましょう。

スポンサーリンク

マスカルポーネムースとチョコレートをコーヒーで結びつける

カカオミルクのソースづくり

ローストして砕いたカカオ豆。
オーブンで10分ほで煎って、香りを引き出してから、熱した牛乳に加えて蒸らし、抽出します。こうすることでチョコレートの香りのするミルクを取り出すことができるのです。ここに生クリーム、シロップを加えて甘味を調節してシリコン型に流して冷やし固めます。
チョコレートの風味を、重たくせずにリキッド状にして表現したい。今回の新作を作成するにあたって一番こだわったところでもあるのですが、マスカルポーネムースの中に忍ばせてカカオの風味と乳の甘味を同時に楽しめるためのパーツづくりです。冷凍も可能なので、液状の状態で閉じ込めることができるのが利点です。

マスカルポーネムースの仕込み

通常の製法でクレームアングレーズを仕込みます。アングレーズの製法についてはこちらから
チーズとして分類されるマスカルポーネは、やはり同様に高い乳脂肪分を含むので、分離には注意が必要です。アングレーズを少量づつ加えて延ばし、なめらかな状態に整えていきます。ホイッパーは使わず、ゴムへらで作業するのが良いですね。

概ね全体が混ざったら、スティックミキサーを使って全体を混ぜ合わせます。乳化作業も兼ねているのです。

一般的なムースと呼ばれるそれに比べるとホイップクリームの量はかなり控えめです。マスカルポーネの味わいが前面に出てくるように配合バランスを整えたムースマスカルポーネは、レストランでデセールとしてサーブされるような濃厚な仕上がりです。

カカオミルクのソースは軽く埋め込んで、マスカルポーネムースを仕上げます。
余談かもしれませんが、ティラミスってカカオパウダーを割と?たっぷり振り掛けるのをよく見てきました。ここにもカカオの風味とか苦味とかが関係してるように感じてなりません。マスカルポーネとカカオに対する思い入れを感じ取ってくださいね。

チョコレートフロア

froid。冷たいを指すフランス語です。もっぱらホットチョコレートドリンクがショコラショー、と呼ばれていますから、冷たいチョコレートドリンクという風に捉えてくださいね。

熱した牛乳と生クリームに、スキムミルクと、寒天ベースの凝固剤をほんの少量加えます。やはりすぐにサーブするドリンクレシピそのままでは固形分の沈殿が起きてしまうので、脂肪分を安定させる目的でルカンテンウルトラを加えています。

水分(牛乳)に対して20%程度。中米カカオのチョコレートを馴染ませていくには、乳化作業をおろそかには出来ません。必ずツヤと粘りのある状態を導きます。

「チョコレートクリーム」まで混ざったら、残りの牛乳を加えて混ぜ合わせ

スティックミキサーで全体を整えて氷水で冷やし、グラスの底に流して落ち着かせます。

組み立てと仕上げ

あらかじめグラスに流しておいたショコラフロアの上にコーヒー風味のホワイトチョコレートホイップクリームを絞り出します。空気を含んだ生クリームは液体の上に浮かぶことを応用しつつ、液状のテクスチャーを安定させることにも一役買ってくれています。
テンパリングして型抜きしたブラックチョコレートディスク、エスプレッソベースのコーヒーゼリーはするりとした喉越しの寒天ベースで仕込んだものをセットします。

ゼラチン、寒天、カラギナンがベースのゼリーは夏のお菓子のマストアイテムです。凝固剤についてまとめた投稿はこちらから

コーヒーのホイップクリームで使用するのは、ドミニカ産の物で、ピーベリー(pea berry)と呼ばれるもの。一般的なコーヒー豆に比べると確かに「お豆」な表情です。
そしてこの豆は、ものすごくチョコレートに寄ったフレーバーを醸しているのが面白くて採用した素材なのです。注意深く味わってみても面白いですね。

ジュレの上にティラミスをセットして、あまりにも有名なフランスを代表する焼き菓子、フィナンシェショコラも添えます。断面の画像も一緒に載せましたが、したたるようなカカオソースのテクスチャー、チョコレートフロアの様子が伝われば幸いです。
フィナンシェショコラにもこだわりがあります。その詳細はこちらからご確認いただけます。

 

どうしても夏になるとチョコレートを敬遠しがちですが、この時期だからこそ楽しめる味わいがきっとあると思います。

そういった意味でも、今回の組み立て方には全体のバランスにすごく気を使ってみました。香りは少々鈍く当たりますが、味わいの面でははっきりと感じ取れるように思います。ぜひお試しください!

スポンサーリンク

ご質問・お問い合わせはこちら
aaa

こちらの記事も読まれています