伝統の踏襲、ザッハトルテから製法を学ぶ

言わずと知れたチョコレートケーキの王道で定番で、いろんな派生もあるようですが、元々は菓子職人だったフランツ・ザッハが1814年のウィーン会議のため作ったのがきっかけといわれている、ウィーンの銘菓ザッハトルテ。ウィーン王室の御用達だった「デメル」と「ホテル・ザッハ」が有名なのですが、この2つのメーカーは「ザッハトルテ」の名称をかけて裁判沙汰になったくらい「ザッハトルテ」という名前は特別なのです。

 

200年も前ですから、レシピはシンプルだけれども、逆に言えばすごく基礎が詰まっている。そういう風に捉えていますし、基礎を疎かにしない。そんな気概でペルシュのショウケースに奇を衒うことなくラインナップしたい。できるだけ素材に対しても素直に取り組んでみました。コレといった目新しさを加えない。という意味です。

そして製法については、いろんな焼き物の製法をなぞって検証してみようと思います。生地の美味しさが相当仕上がりに左右する事と、自分なりにこれまで培ってきたスキルを今一度整頓する事で、製菓に携わっている、いないに関わらず、たくさんの方に興味を持ってもらえるように。そんな思いを込めての投稿です。

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ザッハートルテの製法からメレンゲの製法スキルを検証する

 

バターはあらかじめ柔らかくします。ここに粉糖を加えます。コーンスターチが配合されていない、全糖、または純粉糖と呼ばれているものを使用します。
バターのクリーミング性を上手く引き出しながらふんわりとする様にミキシングしていきます。

卵黄を少しづつ加え、都度キレイに混ぜ合わせ、さらに泡立てていきます。

卵黄が冷たいとバターが固化してしまうので、30度ほどに温めてから加えるとバターとの乳化作用も高まります。なお、冬場で室温の低いラボでの作業は難易度が高いのですが、それぞれの工程の意味合いをきちんと踏まえながら行うことが重要です。

メレンゲの泡立て。卵白は一度高速のミキサーにかけて、コシを切った状態にします。

少し白っぽくなったらグラニュー糖を一度に加えます。
基本、ペルシュでメレンゲを作る場合、グラニュー糖はあらかじめ加えた状態で泡立てることがほとんどです。

メレンゲの泡立て方は本当にいろんな考え方が有って、どれが正しい。と言う明確な答えも曖昧だったりしますが、今回は自分自身の持論を書き記すことで、いろんな方に対してメレンゲ育成法(表現が少し違う?)のヒントになったら嬉しいな。と思います。

まず最初に理解していただきたいのが、卵白に糖分を加えることで、メレンゲはしっかりと力強い気泡になります。
ただし、それに反比例してふんわり感は損なわれます。重たい目の詰まった気泡になるのです。

重ためのアパレイユに軽い食感を。となれば、糖分(グラニュー糖)をあまり加えないメレンゲを。ショコラオショコラには卵白4に対して1の砂糖。

シフォンケーキの場合も同様ですが、アパレイユと同量程度のメレンゲが加わるので、少し糖分を上げてふんわりとした仕上がりのメレンゲを泡立てて使います。卵白3に対して1の砂糖。

基本的に、ペルシュでは卵白に対して50%までのグラニュー糖が加わる場合は、卵白を泡立てる前に全てを加えてから泡立てます。

卵白の水溶化や季節によって卵の濃度にも左右される部分は否めませんが、ほぼ一定な泡立ちをしてくれます。基本、年間通じて安定した状態の製品づくりを目指しているので、この製法を基本としています。グラニュー糖が卵白の量の同量、もしくは上回る場合は例外です。

焼き菓子の場合にもメレンゲが加わるタイプがあります。ここでその例外について言及します。

ガトーショコラクラッシックはどっしりとした焼き上がりを目指すので、メレンゲも重ためのしっかりとした泡立ちを目指します。

卵白とグラニュー糖は1:1です。 (ガトーショコラの製法の詳細についてはこちらから

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ガトーショコラガーデナーの製法はザッハトルテと同様、生地の美味しさの追求から始まります。少し考え方(製法)に相違があるのですが、基本製法はほぼ同じです。

詳細についてはこちらから

焼き上がった生地は乾燥を防ぎながら熱を抜いて、3枚にスライスしてからアプリコットジャムをサンドして、全体をナッペして、表面が固まる程度に冷凍します。

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アプリコットはハーフカットの果肉とピューレ、グラニュー糖、ペクチンを合わせて弱火で煮詰めたもの。適度な酸味と杏の美味しさを損なわないように気をつけます。

チョコレートのグラサージュを上掛けます。厳密にはグラズール、少しシャリっとした舌触りのチョコレートコーティングこそが、ザッハトルテの味わいを決定づける要因のひとつです。
砂糖の再結晶化を利用した、ものすごく特殊な作り方です(普通の洋菓子はこの再結晶をさせないように砂糖には衝撃を与えないで溶かします。キャラメルを作るときに、グラニュー糖がシャる現象がみられます。)この砂糖の糖化(再結晶化)の事を「シャる」と呼びます。通常のグラサージュショコラとは少し違ったその製法を解説します。

チョコレート、お水、グラニュー糖、生クリーム。全てを鍋に入れて火にかけ、沸騰するまで混ぜ続けます。

チョコレートが沸いたら、、1/4量ほどをステンレスバットに広げて、パレットを使って、混ぜる手が重くなるまで(冷えて固まってくる)全体を混ぜ続けます。

鍋にチョコレートを戻し、軽く全体を混ぜ、再度かき混ぜる作業を繰り返します。

少しザラついた見た目になります。合計で4〜5回。この作業を繰り返し、粘度が適切に増してきたタイミングで作業を終了します。この時のグラズールの温度も重要で、50度を少し下回る程度の温度帯が理想的な様です。

仕上がりです。少しマットなザラついたテクスチャーが確認できます。糖度が上がり、濃度も上がるのです。

表面を凍らせておくことでアプリコットジャムがグラズールに引っ張られて滑り落ちるのを防ぐのです。また、グラズールの濃度が濃すぎると、厚くグラサージュが掛かりすぎるので仕込みには注意が必要です。

残念ですが、シャンティ(ホイップクリーム)は無糖ではないのですが、リッチな美味しさには、思わずうっとりする満足感に満たされますね。
アプリコットの酸味は少し控えめに感じてしまうかもしれませんが、全体のバランスの良さにはある程度及第点に到達したように思っています。
また、今回はスイスチョコレート、カルマ社のハーフビターチョコレート(マダガスカル)を採用しています。東欧。という雰囲気づくりを意識すると必然の選択だと思います。その辺も併せてお楽しみくださいませ。

その他、イタリアンメレンゲについても詳細に記したブログ記事もこちらからご覧いただけます
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