人気のほうじ茶で仕上げたチョコレートスイーツと製法を科学的に解説します

ほうじ茶のブームは未だ陰りを見せることなく、今年の冬もコンビニのHOT飲料売り場でも数種類のほうじ茶由来の商品が陳列されています。
ペルシュでも昨年夏に、食欲減退の夏場から初秋にかけての季節に、香りの良い素材で嗅覚に訴えかけることで、食欲に働きかける目論見を持たせたスイーツを発表しました。
その時のスイーツの詳細についてはこちらから

さて季節も変わって冬本番ともなると、寒さのせいかいろんな感覚が鈍くなるのも事実。身体は代謝を上げようと熱量の多く出るハイカロリーなもの、温かい飲み物や食べ物で身体を暖めようとします。緑茶に比べて、番茶やほうじ茶のように「炒る」ことで香りの輪郭がハッキリしたものの方が、寒さで少し鈍感になっている嗅覚にとっても簡潔で解りやすい、そのせいではないだろうか?などと推測してもいるのです。(あくまで個人の憶測ですので)

過去にお月見茶会という、ワークショップを開催させていただいた経緯があり、そこで触れた釜炒り茶が、ほうじ茶などのお菓子を制作する際の礎になっているようにも感じます。お月見茶会の詳細はこちらから。ブログにて紹介しております。

過去の経験、今まで蓄積した事柄を盛り込んだ新作の、栗とほうじ茶ミルクを通じて、ペルシュらしいオリジナリティの訴求はもちろんの事、今回はレシピ構成についても紐解いていきますのでそちらも併せてご覧ください。

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ほうじ茶ミルクをチョコレートと合わせて和風に仕上げる

ほうじ茶を煮出してムースショコラを仕込む

牛乳を沸騰させたらほうじ茶を加えて、蓋をして蒸らして香りを抽出します。

ゼラチンを加えて溶かしたら、ほうじ茶を強く押し潰しながら裏ごして、エキスをしっかりと抽出したほうじ茶ミルクを、溶かしておいたホワイトチョコレート、ミルクチョコレートのブレンドに少しづつ加えながら乳化状態にしていきます。

しっかりと泡立てたホイップクリームと、20度程度に調節したガナッシュを丁寧に混ぜ合わせます。

シリコン型にほうじ茶のムースショコラ、栗のアングレーズ、クリスピーを敷いたケイクショコラをセットして冷やし固めます。

ケイクショコラは溶かしたチョコレートと生クリームを合わせたガナッシュ、溶かしバターを加えたパウンド生地の製法で焼き上げたもの。

焼き上げたケイクの上には、溶かしたホワイトチョコレートとアーモンドペースト、ほうじ茶を粉状にすり潰したものを加えてクリスピーに仕上げます。
食べた時の食感に、しっかりとした印象を持たせるため、厚みは薄めでもしっかりとしたクリスプな食感です。

 

 

固まったら型から外して、溶かしたホワイトチョコレートとカカオバターのミックスを全体にスプレー掛けして仕上げます。

主役のほうじ茶を引き立たせるための栗は、今回はあくまで脇役。
香りよりも味わいが印象深い、栗の奥行きこそが、チョコレート単独で構成したほうじ茶ムースでは不足する、満足度をより高めるパーツなのです。

 

チョコレートムースの構成を化学的に捉えて組み立てる術

ムースショコラの合わせ方は本当に人それぞれ、意見も考え方も違うので、明確な答えがコレだ!と言えないのが正直なところですが、牛乳と保形性を保つゼラチン、ホワイトチョコの場合だと、クリームのセット力は弱め。固形分として、油分として捉えられるカカオマスが入らないため、油分が減ることで分離も起き難い、固まる力も弱い。(なのでゼラチンで補強するのです)
通常のカカオ分が高めのブラックチョコレートだと、60数パーセントに比べて、ホワイトチョコだと約半分、30%程度が平均的です。残り30%はじゃあ何なのか?簡単なことです。糖分なのです。(粉乳は固形分として考えています)

余談となりますが、一般的に言うとチョコレートが太りやすい理由の原因に糖分が挙げられます。近年、ハイカカオのチョコレートは太りにくく、カカオ豆由来の高カカオポリフェノールなるものが健康効果にも期待が持てる。といった記事も見かけます。

健康効果が高いと言われるカカオマス。しかしながらお菓子づくりにおいては、扱いの難しい厄介な存在。
単純にカカオ分が高いほど、糖分も必然的に低くなり、チョコレートムース、ホイップクリーム、ガナッシュなどなど、水分を加えて固形のチョコレートを加工する時にほぼ必ずついて回る、乳化作業においては分離のリスクが高まるのです。乱暴に言うと、糖分は乳化を促進してくれるつなぎの役割を担ってくれる。そういう風に理解してもらえればいいのではないでしょうか?

今回は油分と糖分のバランスのみを言及した、乳化の話にとどめておきます。しかし、油中水滴型の乳化において、そこには当然全体量における水分のバランスも加わってきます。チョコレートガナッシュのお話をする機会に恵まれた時に、改めて説明ができればと思っています。

ではなぜホワイトチョコレートなのか?

*ただ単純に、乳(生クリーム)、糖分を増やせばいいのでは?
*カカオマスの添加されるブラックチョコレートではダメ?

ホワイトチョコレートを使用する時に、一番気にするのが口どけの良さです。
砂糖と生クリームだけでは当然のことですが、ホイップクリームの延長でしかありません。バターを使うことも考えられますが、チョコレートよりも冷蔵庫に入れると固く締まってしまいます。バターは一度溶かしてしまうと、元通りの状態にはなりません。

ホワイトチョコレートを含む、すべてのチョコレート(クーベルチュール)には、カカオバター(ココアバター)と呼ばれる、カカオ豆を圧搾して抽出した油分が含まれています。このカカオバターが、なめらかな食感や口どけを演出してくれるのです。
また、カカオバターの溶解においても、バターが温度上昇に伴ってダラダラと溶けていくのに対して、カカオバターは25°C の状態では未だ固形分として留まり、25°C を超えると徐々に融 けはじめ,30°C を超えるあたりで一気に融解が進み, 35°C に達する前に完全に融解してしまう。そんな性質の持ち主です。
簡単に言えば、口の中に入れると、口内の熱(カンタンに言えば体温)で一気に溶けるから、口どけが良い。そのように解釈してください。

もちろん、ホワイトチョコはその甘さも目立つ存在。合わせる素材の特性を活かしてあげるようにする工夫や、お菓子全体の組み立てかたでも印象が変わります。

カカオマス、ココアバター、粉乳。チョコレートの事をまとめた詳細記事はこちらから

アングレーズクリームに代表されるように、卵黄がたくさん入ってくるレシピ構成では油分が増えてしまい、ほうじ茶の香りを損ないかねません。ホワイトチョコレートを主体としたクリームが口の中で溶けていくと同時に、香りが広がる。そんな数式を、このほうじ茶スイーツでは当てはめているのです。


松の実のキャラメリーゼ

松の実をシロップでキャラメリーゼしながら、途中でほうじ茶葉を加えて、香りを移します。

カリカリクリスプな食感、噛むと広がる香り。油分も豊かな松の実はそれだけでも十分食べ応えがあります。

マロングラッセ、クリスピーを添えて完成。
科学的側面を踏まえながら、制作構想と工程を織り交ぜながらの記事投稿となりましたが、いかがでしたでしょか?
今後も新しいお菓子の開発、提案にも尽力します。ここでしか味わえないお菓子づくりを目指してまいります。

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この記事を書いた人
グーちゃん

福井県鯖江市でケーキ屋を営むシェフが、お菓子についての疑問を幅広く解説することを代弁する小鳥。

現場で培った経験はもちろん、ケーキ作りで欠かせないレシピ作りの構成、素材に対しての向き合い方。
時々自身のブログではお菓子作りを通じての活動や日々感じたことも紹介しています。

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